【ホッケー部男子】4年生卒業記念 「真摯」 #7佐藤拓真
大学で初めて出会ったホッケー
「今日絶対勝ってリーグ戦2部優勝すんのか? 準備はできてんのかよ? 最後まで走り切るぞ!」 グラウンドイン前、大井ホッケー場のロッカー。優勝を決めた試合は佐藤(社4)のこんな円陣から始まった。選手・スタッフ全員が気持ちを昂らせ、その声で一つにまとまった。
高校時代はサッカー部。サークルも気になったが、体験入部に行った際の先輩が優しく、ホッケー部の雰囲気の良さにひかれ入部した。ホッケーという競技自体を初めて知ることもあり、毎日が新鮮だった。未経験者ながら1年次からリーグ戦に出場。「点差もあったので気楽にできたというか楽しもうと思って出ました。」と当時を振り返る。
2年次はFWとして徐々に主戦力に定着。ゴールを決めるなど、二部優勝・25年ぶり一部昇格に貢献した。昇格後、一部では結果が残せなかった。しかしそれより、レベルの高い相手と戦う初めての経験に心が弾んでいたという。「高校時代のサッカーでもそんな強くなかったんですよね。なのでこんな強い相手とできるんだ、貴重な経験を今しているんだなと思っていました」。経験者が多い強豪校との戦いに初心者が臨むことができる幸せをかみしめた。
ラストイヤー
昇格を期して臨んだラストイヤーだったが、就職活動の影響で練習に行く日が減ってしまう。「技術面、体力面が落ちてきて全然うまくいかないという部分が非常に多かったかなと思います」。チームも武蔵大にSO戦で敗れ、優勝・昇格を逃した。
悔しい経験を経てチームは進化していく。「一部に昇格しようという強い気持ちを持っていた人が多かったですね」。夏の合宿ではミーティングで他のポジションが何を考えているかの整理を行うことで、意思統一を図った。秋リーグ開始後はチームとしての完成度が試合ごとに高まっていく。「チームが一つになって戦えるようになり、自分としても生き生きしてプレイできていたなと思います。」チームの内部にいた佐藤も4年間で最も昇格への思いが強かったシーズンだったと実感していた。
決勝では担当していたPCの「止め」に何本かミスが出たが、最後のゴールではしっかり止め、篠崎のゴールをアシスト。試合後には「自分はちょっとイップスみたいになっていて止めが止まらなくなりました。次の入れ替え戦では勝てるように今後も努力していきますのでよろしくお願いします。」と話し、後輩たちにいじられた。佐藤の反省文のような話ぶりでチームに笑顔の花が咲いた。
いつの間にか抱いていたホッケーへの熱
ホッケーなどサッカー型競技において、中盤はとにかく走る。攻撃時は前線のフォローに向かい、守備時は最終ラインに加わったり、プレッシャーをかけてボールを奪いに行く。佐藤は2023シーズン春秋共にそんな中盤・MFで出場した。
しかし当の本人は「FWをやりたい気持ちはありましたね。」と語る。サッカー部時代から得点をとりたくてFWには憧れていた。体力面でも心配があったが、周囲は視野が広く周りを見て行動できる佐藤に中盤の適性を見出した。最終ラインからつなぐ立教の攻撃には、冷静にボールをさばける中盤のリンクマンが欠かせない存在。守備時の寄せの速さやパスは代名詞といっても過言ではない。
チームメイトの篠崎(文4)は「わからないことはすごく聞いてくれて、ホッケーの話をしているときは輝いている。社会人リーグの試合もYouTubeでみたりして、ホッケーに熱くなってくれた。僕が育てた最高作品(笑)」と佐藤のホッケーへの熱意を語った。主将・小林(法4)が初心者とは思えない上手さと評価する技術は、ホッケーに真摯に向き合うことで身に着けたものだった。
佐藤にとってホッケーとは
「人間的に成長させてくれたもの、学ばせてくれたもの」と答えた。「主務を任されることで仕事のやり方、進め方を学べたのは大きかったです。全くできないことができるようになって努力して結果が実った経験もできた」。
新チームでは自らの背番号7を継承する粟国輝(営2)に期待している。「上の代からすごい方がつけている印象で、それにこたえられるような選手だと思うので頑張ってください」とエールを送った。引退した4年生で唯一、初心者から始めて試合に出場し続けた原動力はホッケーへの真摯さ。卒業後、その姿勢はどんな舞台で生きるだろうか。
(3月1日 山岡雄一郎)