【ホッケー部男子】4年生卒業記念 「支」 #10小林晃大
フィールドプレイヤー転向、厳しいデビュー戦
高校時代にホッケーと出会う。キーパーとして3年間出場するも人数がそこまで多い高校ではなく、目立った戦績は残せなかった。大学入学後はサークルに入ろうと考えていたものの、入学当時のサークルはコロナウイルスの影響で活動を行えていない状況。高校でやっていたホッケーを続けることになった。
入部後は初心者が多いながらもレベルの高い選手たちに衝撃を受ける。上級生のキーパーがうまかったことやフィールドプレイヤーへの憧れもあり、活躍の場を移すことになった。そんな中、1年秋リーグ戦で初出場。「ゴール前でめちゃめちゃいいパスをもらってしっかり外しました。緊張していたのと実力もなかったので焦っちゃって、決められなくて悔しかったです」。デビューはほろ苦いものとなった。
怒涛の2年生、停滞の3年生
昇格を決めた2年次のシーズンは状況が目まぐるしく変わった。同郷で仲良くしていた当時の主将が春リーグ中に突然退部。そんな状況でも来る試合のために複雑な気持ちをなんとか切り替えた。「追い込まれると強いんだなって思いましたね」。危機的状況を乗り越えて優勝し一部昇格を決めた。秋の一部では二部との差の大きさを実感することになる。食らいつくのでさえ精一杯のスピード感に圧倒された。
翌年、上級生になるも「3年の時が一番チームに貢献できなかった。」と振り返る。チームも降格するなど厳しいシーズンに。就職活動という集中しなくてはならないものがホッケー以外にできたことで、自信を持って練習をやり切ったといえなかった。
主将として
11月に主将の座を先輩たちから託される。最上級生としての姿勢を見せなくてはならない不安と新たなチームへの希望は心の中では半々だった。
チームの人数も選手・マネージャー共に人数が増加。大所帯をまとめ上げる中で最初は苦労が絶えなかった。「あんまり強く言えるタイプじゃないんですよ。その中で遅刻とか練習中の姿勢とか、どうしてもやってくれないときにどうしようかすごく悩みました」。主将としてどうチームをまとめるか考える日々。石井コーチからも助言を受け、練習から言い続けることを心がけた。
苦しみの春を超えて
春シーズンの門出は順風満帆だった。絶対的エースの篠崎(文4)を怪我で欠く中、プールでは相次いで6-0、8-0と得点差をつけての勝利を挙げる。「粗削りではあったんですが練習試合でも結果を残していて、自信を持って春シーズンに入れましたね」。しかし思わぬ落とし穴が待ち受けていた。全勝で迎えた準決勝、武蔵大に残り1分で追いつかれSO戦で敗戦。「負けを知らずにそのまま行っちゃって、最後足元すくわれて…。天狗になってましたね」。順調に来ていたからこそ、まさかの厳しい結果に打ちのめされた。
秋に向けて、個人技術の底上げを心がけた。「チームとしての戦い方はできていたので、ベンチ入りしている選手の質を挙げよう」。ベンチに入っている全員で戦える体制づくりに着手。またメンタル面でも練習からチームスローガンのポジティブを徹底した。下級生たちも奮起し、「4年生のために」という雰囲気が醸成されていく。技術だけでなく、雰囲気や明るさで押し勝つ試合も増えた。
迎えた試練 4年生で、みんなで掴み取った優勝
そんな中迎えた準決勝、ピッチに小林の姿はなかった。4日前に交通事故に遭い、怪我をしてしまったからだ。主将を欠くという思わぬ事態にチームは動揺を隠せず、思うように試合は進まない。外から見る歯がゆさもあったが、焦らないように声をかけ続けた。副将・平野(社3)を中心に「4年生のために」チームの気持ちはもう一度一つになる。絶望的な状況だったSO戦で奇跡が起こり、逆転勝利。試合終了後、小林の目には光るものがあった。「言葉も出ないくらいうれしかったんだと思います」。
続く決勝では怪我が癒え、試合に出場。PCで「出し」を担当した。「3年間くらいやってきた出しなので、4年の3人で繋ぐんだぐらいの気持ちでやりました」。3得点すべてをPCでとり、優勝を達成した。「4年間の自分の中のベストゲーム。試合中は負けているのになぜか自信あったんですよ。チーム皆も負けている感じじゃなくて、スローガン通りにやってきた集大成でした」。自分が描いたチームの理想像がまさに決勝で出た試合だった。
穏やかであたたかい「あっくん」
主将像は様々あるが、小林は伴走できるリーダーだったように感じる。「あっくん」と呼ばれ、後輩たちにも慕われた。いつでも誰に対しても笑顔で穏やかな雰囲気。佐藤(社4)は「最初に声掛けてくれたのが小林で、不安な気持ちが解消されました。彼が主将じゃなかったらこんな団結力は出なかった」、澤井(文4)も「初めて練習に行ったときに話しかけてくれて、敬語でしゃべってたら『いやいや、同期』って言ってくれて。あっくんが主将だったからみんな頑張ろうってなれた」と口をそろえる。暖かい雰囲気はチームをまとめ上げるのに不可欠な要素だった。
小林にとってホッケーとは
「支えですね。ホッケーやることで逆にホッケーに支えられました。」と答えた。「充実した4年間を送れたのはホッケーのおかげです」。新チームでは斎藤(理3)に期待している。「シーズン終盤に見せたドリブル力、キープ力。MFとして引っ張ってくれるのではないかと思っています。僕たちの成し遂げられなかった昇格っていう夢をかなえられるよう頑張ってほしい」。
新チームの昇格・優勝へメッセージを送り、小林はスティックを置く。ポジティブという理想を掲げ、チームをまとめ上げた背番号10の思いは次の代へ引き継がれる。
(3月1日 山岡雄一郎)