【ホッケー部男子】4年生卒業記念 「勝利の価値」 #16篠崎太智
日本一を経験した男
現4年生で唯一、アスリート選抜で入学したのが篠崎(文4)だった。親の影響でアイスホッケーを始めたのは幼稚園の頃。陸上ホッケーは小学校4年生から始めるなど、物心ついたころからスティックを握っていたという。中学では全国3位。高校でも2年次のインターハイで優勝、3年次では国体、選抜準優勝と全国トップレベルのホッケーを経験してきた。
そんな篠崎が立大を選んだのは意外な理由だった。「英語の勉強ができるところに行きたくて。勉強もやりつつ、ちょっと大学生しながらホッケーやれたらいいなって思っていました」。高校までのホッケー漬けだった日々から一転、語学の分野に進みたく勉学を優先した。そんな気持ちで入ったが、練習参加した際に感じた立大の第一印象は「いい先輩たちと楽しくできそう」。新しいホッケー人生の始まりに期待感を持っていた。
早くも迎えた転機 奇しくも外れたSO
そんな篠崎だったが、早くも1年生次に転機を迎えることになる。秋リーグの準決勝、東大戦。SO戦で篠崎が外し、敗戦した。当時の4年生のラストシーズンをその手で終わらせてしまった。「ちやほやされて入ってきたのに、すごい調子乗って。大好きだった当時の4年生の先輩たちにとても申し訳なかった」。経験者でありながら負けに直結するSOを外し自分の不甲斐なさに腹が立った。「この試合は今後の学生生活にとって良い経験で、ホッケーに向き合う転換期になりましたね」。
2年次には、25年ぶり二部優勝・一部昇格に貢献した。記憶に残っているのは1年前に敗れ、過去4年勝っていない東大を相手に戦った準決勝。コロナの影響でベンチ入りは13名と危機的状況だった。0-0で4Qを終え、1年前と同じSO戦になる。篠崎は大事な一番手に立候補。相手のキーパーを前に誘い出すと、鮮やかなループショットを決めた。「屈辱を果たしたあの試合は4年間で一番印象に残っていますね」。そこから立大はビックセーブが出るなど勢いにのり、勝利。その後学習院大戦、一橋大戦で昇格を決めた。
勝つことの難しさ
3年次は怪我を抱えての出場となった。経験者が多い一部では結果が残せず厳しい内容に。二部に降格するなど難しいシーズンになった。「勝てる試合で勝ち切れなかった。勝つことの難しさを感じた1年でした」。4年春も腰を痛め万全な状態ではなかった。準決勝の武蔵大に残り数秒で追いつかれ敗戦。「自分だけじゃなくて周りの子たちの底上げは足りなかったのかもしれないですね」と振り返った。
秋リーグの優勝・昇格に向けてどう貢献するか考え、チームのメンタル面の改善に取り組んだ。「前半にリードされただけでなんかしょげちゃうし、黙り込んで。あとで緊張してたのか確認したら、大半が手を挙げていたんですよね」。緊張緩和のため、高校でやっていたビジュアライゼーションを取り入れた。瞑想し、各々が活躍するイメージを浮かべることでパフォーマンスの向上に貢献。決勝は前半で2点差をつけられたが、ビジュアライゼーションの効果もあったのか、強い気持ちを全員で結実させ、逆転し優勝を果たした。
立大でこそ味わえた新たな喜び
エリート街道を歩んでいたからこそ、立大では新たな喜びを味わった。未経験者が成長していく姿やバックグラウンドが異なる選手たちと一緒に試合をし、勝利を目指す。「中高とはうれしいの種類が違いました」。成長を見ながら勝利を喜べたのは一生の財産だと語る。
また、ホッケーを始めたきっかけでもある両親はしばしば栃木から試合観戦に来訪。一番大学生活の中で嬉しかったことを尋ねると「いつも厳しく指摘する両親・特に父親がほめてくれたりすることかなと思います」とはにかんだ。
輝き続けた背番号16
1年次から背負う背番号16はまさに篠崎の代名詞。チーム事情でキーパー以外すべてのポジションをこなしながらも、在籍7季で6度のベストイレブン、2度のMVPを受賞した。ボールを運ぶドリブル、パス、フリック、スクープはどれをとっても一級品。試合ではいつも「篠崎がボールを持つとどうにかなる」と周囲をワクワクさせるプレーを見せてくれた。大学でも成長を止めず、4年秋に大きな得点源となったPCのフリックはGK・川勝(コ3)との自主練で培った努力の結晶だった。
篠崎にとってホッケーとは
「自分の一番の商売道具」と答えた。「篠崎太智といえばホッケーしかないというか。長年ホッケーを続けさせてくれた両親に恩返しする道具としても、19年近くの体験によって作られた、堂々と胸を張って誇れる自分を売ってきた道具です」。
新チームの注目選手は本間(済2)と三宅(コ3)を挙げた。「本間はリバウンドの球際とか、僕に無いものを持っている印象があります。三宅はセンスを感じますよ。大学から始めてあんなフリックが打てるんだと感じさせられました。中身はぶっ飛んでますけどホッケーはピカイチです」と期待を込めた。卒業後も配属先にもよるが、ホッケーを続けようと考えているという。立大ホッケー史に残る2度の二部優勝、25年ぶり昇格を語るうえで、この男の存在は欠かせない。アスリート選抜で入部し、長年にわたってチームの大黒柱をつとめたレジェンドがついに立大を去る。
(3月1日 山岡雄一郎)