【陸上競技部】道下美槻選手卒業特集 「笑顔で締めくくった4年間の集大成 富士山女子駅伝」 ②~見えない重圧~
昨冬、全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝)に初出場を果たした立大女子長距離パート。このチームの中心選手の一人は1500㍍日本学生記録保持者の道下美槻(社4)だ。中距離種目が専門の選手だが駅伝では長距離区間を担う。本選に出場した選手の平均タイムは22チーム中最下位ながら、14位と躍進する結果に大きく貢献。そんな立大を初出場に導いた学生トップランナーが挑み続けた1年間を追った。
(全3回、#①はこちら、#③はこちら)
未踏の地へ
立大陸上競技部は創部103年。長い歴史を持ちながら、未だ全日本大学女子駅伝(杜の都駅伝)、富士山女子駅伝への出場は果たせていなかった。そのような中、本年度はチームに小川(済1)が入学。1年生ながら関東インカレ5000㍍において準優勝の成績を残したスーパールーキーの加入で、女子二大駅伝への出場に向けチームは本格的に始動した。
中距離専門の選手が多かった女子長距離パート。練習から長距離への経験を積むために、以前よりも10000㍍前後の走り込みを大幅に増やした。各部員が自己記録を更新し、上位7名の5000㍍の平均タイムは昨年よりも約1分縮まった。チームの悲願達成が現実味を帯び、部員の士気は向上する。そして惜しくも杜の都への切符は逃したものの、12月上旬、富士山女子駅伝に5000㍍平均タイム枠で念願の初出場が決定した。
見えない重圧
しかし、小川とともにチームを快挙へ導いた道下の心身には夏頃から不調が表れていた。「長距離に必要な有酸素を鍛えるために新谷(仁美)さん(積水化学・10000㍍、ハーフマラソン日本記録保持者)の合宿に参加しました。その中で普通に走れれば全然走れる練習なのに、練習前から体調が悪く走れずに、また次頑張らなければと思うと、緊張して走れないという悪循環になった」。
プレッシャーに加え、専門の中距離とは調整法が異なる長距離種目の両立や足の故障も重なり、状態を落としていた。9月に行われた全日本インカレでは途中棄権と満足がいかない走りが続き、疲労困憊(こんぱい)に陥った。そのため富士山女子駅伝へ出場が決定した場合でも、自身は出走しないことも一度は考えたという。
仲間の存在
諦めかけた時期もあった中で、意識が変わったきっかけは仲間の存在だった。「駅伝は自分が失敗しても大丈夫。みんなと全国の舞台で走りたい」。生徒主体で取り組んだからこそ、ともに努力を重ね初出場を勝ち取ったチームへの思いが強くなっていた。仲間への信頼が心にかかった雲を晴らし、再び富士山女子駅伝へ挑戦することを決意した。
出場が決定した12月中旬からは身体に強い負荷を掛けず、状態を上げるための調整に取り組んだ。小川とともにビルドアップ走などの練習を行い、本選に向け徐々に走る感覚を取り戻す。そして12月30日、快晴となった富士山本宮浅間大社前の第1中継所には道下の姿があった。
(3月26日/取材・編集 大内貴敬)