【陸上競技部】道下美槻選手卒業特集 「笑顔で締めくくった4年間の集大成 富士山女子駅伝」 ①~確かな成長~
昨冬、全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝)に初出場を果たした立大女子長距離パート。チームの中心選手の一人は1500㍍日本学生記録保持者の道下美槻(社4)だ。中距離種目が専門の選手だが駅伝では長距離区間を担う。本選に出場した選手の平均タイムは22チーム中最下位ながら、14位と躍進する結果に大きく貢献。そんな立大を初出場に導いた学生トップランナーが挑み続けた1年間を追った。
(全3回、#②はこちら、#③はこちら)
自立する力
「苦しんだ1年だったが、大学4年間で1番楽しいレースができた」。3月20日、立大卒業を間近に控えた道下は学生最後の公式戦を笑顔で振り返った。本人がそう語るように、大学競技のラストイヤーは順風満帆ではなかった。5000㍍の自己記録は更新したものの、主戦となる1500㍍ではベストを記録できず。9月に行われた全日本インカレでは途中棄権となるなど、トラック競技では不本意な成績が続いていた。
順天高から進学し、世界の舞台を目標として4年間挑戦を続けてきた。しかし、入学前は全国で目立った成績は残していなかった。1度だけ出場したインターハイは予選で敗退。「高校は強豪校のプレッシャーが厳しく、比較的自由な大学を選んだ」。学生が主体となり、基本の練習メニューを部員が作成する立大。指導陣がおらず自立して練習を行うことが求められる環境で、陸上に対し真剣に向き合う時間が増えた。その成果として自身に適したトレーニングを考える力が身に着き、入学直後から頭角を現し始めた。
大学1年目から日本選手権決勝に出場し、翌年にホクレンディスタンス千歳大会にて1500㍍日本学生記録を24年ぶりに更新する。3年次には日本選手権で銅メダルをつかんだ。夢の舞台へ近づくため、昨春には豪州で海外のレースにも挑戦し武者修行。大学入学前は実績を残すことができなかった。しかし立大で主体的な練習を積み重ね、挑戦を続けたことは着実な結果として表れる。そして、その成果が確かな自信へとつながっていた。
「自分らしい走りを」
しかし大学生活の集大成となる本年度はシーズン序盤から成績が振るわなかった。豪州から帰国後、シーズンインし4月に行われた個人選手権。ワールドユニバーシティゲームズ大学日本代表入りを狙い、強い思いを持ち大会に臨んでいた。後半勝負のレース展開を予測するも、スパートで競り負け3位に終わってしまう。決勝レース直後には、トラック上で涙を抑えられなかった。持ち味である攻めた走りをせず、守りに入ってしまった。その結果、実力を十分に発揮できなかったことに悔しさをにじませた。
「自分らしく攻めた走りをしたい」。個人選手権以降、本人が度々口にしていたこの言葉。体現したレースが5月に行われた関東インカレ1500㍍だった。順当に決勝に臨んだ道下は序盤から大きく飛び出すレースを展開する。しかし残り300㍍で後続に追い付かれ、結果は10位。昨年表彰台に登った日本選手権も、7位に終わる。鍛錬を重ね、結果を残し続けた3年間。自信があったからこそ、自らに重圧をかけてしまっていた。
「自分でプレッシャーをかけてしまっていた。田中(希実)さん(New Balance・1500㍍、5000㍍日本記録保持者)や新谷(仁美)さん(積水化学・10000㍍、ハーフマラソン日本記録保持者)に比べたら何も背負うものはないのに、自分で自分の首を絞めてしまった」。成長を続けた大学での競技生活。集大成となるラストシーズンは、個人として満足する結果が得られない。そのような状況の中、所属する立大陸上競技部女子長距離パートは大きな転換期に入ろうとしていた。
(3月26日/取材・編集 大内貴敬)