247・248合併号
立教スポーツ247・248合併号
2023年7月6日更新
【フェンシング部】渾身の一撃!死闘を乗り越え未到の境地で王座に立つ! 不退転の覚悟で金星手にする 橋本 フルーレ アジア制覇 「自分を信じてやり抜いた」
神童・橋本祥英が、異国の地でも確固たる実力を見せつけた!思うように結果が振るわず涙を流した前年度。悔しさを糧に努力を重ね、国内主要大会を好成績で終えた。 代表内定後も、その勢いは止まるところを知らない。ついにアジア最高峰の舞台で金メダルを勝ち取る。世界を舞台に活躍する名選手へと、確かな歩みを進めた。
怯まぬ闘志
夢の舞台でつかんだ金メダル。戦勝の咆哮(ほうこう)をあげ、橋本はアジアの頂点へと上りつめた。 5勝1敗で予選を通過し、臨んだトーナメント初戦。試合は最後の一本勝負にもつれ込む。「ここで負けてたまるか」。相手が読み合いに耐えかねた瞬間を狙い、冷静に仕留めた。緩急と繊細さを兼ね備えた巧みな剣さばきが光る。勢いに乗ると、その後の3連戦も順調に白星を飾った 迎えた最終戦。予選で唯一の敗北を喫した難敵が立ちはだかる。戦況が拮抗するも、終盤にペースを崩された。果敢に前へ攻め込んだ隙を突かれて連続得点を許してしまう。先に王手をかけられ、真価の問われる大一番に持ち込んだ。落とすわけにはいかないと、橋本は心を落ち着かせる。相手の裏をかき、左脇から背面へ攻め込んでポイントを獲得。同点に追いつき、試合は正念場を迎えた。敵手の突きを避けながら前に踏み込んで、胴の中央へ剣先をねじ込む。次の瞬間、両者の視線は電気審判機へ。勝利を示す緑のランプが点灯し、橋本は力強く拳を握り締める。立大初のアジア王者が誕生した瞬間だった。 表彰台の真ん中で笑顔が輝く。達成感に満ちた堂々たる風采。若き剣士は世界の壁を打ち破り、希大の栄誉を歴史に刻んだ。
惜しまぬ修練
どんな困難も冷静に乗り越えた今大会。記録更新の裏には、王座獲得への強い執念があった。 国外試合の出場をかけた昨年度のJOC。橋本は無念の2回戦敗退を喫する。勝利への重圧に耐えられず、思い通りプレーができなかった。「何かを変えないと世界に届かない」。いかなる局面でも実力を出し切ることを意識した。 着目したのはメンタルの強化とプレー面の思索。毎日2㌔走り込み、忍耐力を鍛えた。さらには直観に頼った戦い方も、頭で考えてから動作へ移すように。対戦中の映像を確認し、感覚と客観的視点を結び付ける。高身長を武器に、相手との最適な間合いを導き出した。 努力は結果へと結びつく。東京都選手権では同期の増田(済2)と相対する。インターハイを共に勝ち抜いた仲間との一戦。緊張が走るも流れは橋本へ。身長差を生かして間隔を広くする。相手の攻撃をかわしつつテンポを変えた突きでポイントを重ねた。5点差で勝利し、3位で大会を終える。その後も好調な試合運びを見せ続け、国内順位は2位に。練習の成果は格上にも通用し、アジア制覇を達成した。 「五輪の金メダリストになりたい」。人一倍の努力家を後押しするのは確かな自信。不屈の剣士は世界を相手に、どんな暗雲も懸命に切り裂いていく。
(髙橋凜)
【水泳部】競泳界の新鋭!ハイレベルな泳ぎで放った存在感 緊張の一戦で強者相手に食らいつく 野井 日本選手権 200㍍・400㍍ W入賞 「怪我に打ち勝ち、成果を出せた」
国内最高峰の舞台、日本選手権。立大の新エース・野井珠稀が、個人メドレーでW入賞を果たした。今季からの主戦場は東京アクアティクスセンターに代わる。全国から集ったトップスイマーたちが、熱戦を繰り広げた6日間。新たな水泳の聖地で、野井の競技人生が再び幕を開けた。
時代の創始
日本最高峰の舞台で個人メドレー種目のW入賞。高校水泳の覇者が、競技人生に新たな1ページを刻んだ。 初日の200㍍で5位入賞の好発進。ユニバーシアード代表入りを目指し400㍍に臨む。出場条件の大学生2位以内を狙い、本命の最終日を迎えた。順調に予選を通過し決勝へ。スタートリストには名だたる猛者たちが並んだ。第一線で戦い続けた野井にも緊張が走る。冷静さを欠いたまま、競技開始の笛が鳴った。出だしは得意種目のバタフライ。しかし、こう着状態に陥り差がつけられない。 「追い抜かれる」。焦りからフォームが崩れ、順位を上げられなかった。巻き返したい背泳ぎでは、テンポを落とさないように意識。全身を使う大きなストロークで泳ぐも、リードを奪えなかった。勝負は折り返し後半へ。苦手とする平泳ぎで遅れを取り、挽回を試みる最終種目は自由形。懸命に追い上げるも結果は6位。入賞を果たしたが、大学デビュー戦は不完全燃焼で幕を閉じた。「もっと上を狙えたはず」。レース後、野井は悔しさに唇をかんだ。 記録は4分42秒48でベストタイ。世界ジュニアへの出場権を勝ち取るも、目標は未達成に終わる。ルーキーの笑顔は、次戦へと持ち越された。
再起の狼煙
日本選手権を機に所属クラブを引退する野井。旧体制で臨んだ最後の一戦は、どん底からの復活を示すレースだった。競技歴は13年。小学校4年次にジュニアオリンピック優勝を飾ると、より熱心に水泳に打ち込んだ。高校時代には、国体やインターハイなど主要大会を制覇。競泳選手として輝かしい成績を収め続けた。 順風満帆だった競技人生は高校3年次の10月に一変。疲労と上半身の筋肉バランスの悪さから肩の深層筋を断裂した。新天地へ向けた準備に歯止めがかかる。泳ぎに対する熱意が失われる中、支えとなったのはコーチの言葉だった。「今できることを全力でやろう」。折れかけた心が立て直され、諦めずにリハビリへ励むことができた。課題は負傷の再発防止。胸椎と胸郭の硬さを改善するため、毎日ストレッチを行う。背部のインナー筋を強化し、筋肉の付き方の差異を解消。故障の壁を破り、競泳界への復帰を果たす。 けがを乗り越え挑んだ今戦。完璧な滑り出しとはならなかったものの、次戦への切符を勝ち取った。ベスト記録更新を狙い今後は新たな環境で戦う野井。 「教わったことを一人でもできるようになる」。古巣を飛び立ったニューヒロインは、もらった言葉を胸に最高峰の舞台へと返り咲く。
(小島優太)
【洋弓部女子】初出場で「銅」明鏡止水の心で決戦制す 正念場で実力発揮!難敵たちを破る一矢 徳永 全日本フィールド 3位 「落ち着いて打てた」
高校時代にアーチェリー界に足を踏み入れる。当初は卒業と同時に競技の引退を考えていた。しかし3年次、感染症の影響で大会が軒並み中止に。不完全燃焼のまま終わるまいと、大学でも継続することを決意。一層成長を遂げ最高峰の舞台で活躍している。
挑戦者として
初出場ながら3位入賞を果たし、ほほえみを浮かべる。予選を最下位グループから勝ち抜き、驚きと喜びが入り混じる結果を手にした。 フィールドアーチェリーの経験が少ない徳永。慣れない種目に不安を抱え力試しをする心持ちで大会に挑んだ。予選3回戦では、インカレで表彰台入りした二ノ井(玉川大)に勝利する。強敵自分の力が通用すると実感。確かな自信が闘争心に火をつけた。 山場は本戦の準々決勝。相手は昨年度のリーグ戦で大敗を喫した森(日体大)だ。序盤から互いに譲らず、静かな攻防が続く。勝負の分かれ目となったのは最終回。相手のミスで好機が到来し、絶対に失敗できないと気負い立つ。「普段通りに打てば成功する」。コーチの助言に心を落ち着かせた。魂を込めた矢が左下4点へと突き刺さり見事逆転。格上に勝利し、次の戦いへ駒を進める。最終戦の3位決定戦は、天候が荒れ大雨の中で行われた。手元が滑らないように、より一層力を込める。フォームを乱さず安定した行射を見せ、勝利の的を射止めた。 「まさかメダルを取れるとは」。 国内最上位の大会で快挙をつかみ、喜びに満ちあふれた。
試練を越えて
昨年のインカレで準優勝を飾り、団体では2年ぶりの王座決定戦進出に貢献。華々しい功績を持つ彼女だが、課題は精神面にあった。 「緊張によって体がこわばってしまう」。 力みから弓のコントロールが狂い、的の中心を射ることができない。克服しようと試行錯誤したが改善は難しかった。転機となったのは先輩の一言。「十分頑張っているから、今のままで大丈夫」。 緊張を否定するのではなく、自分の気持ちに正直に。彼女は改めて弱点と向き合い始めた。 感情に振り回されないよう鍛錬を積む徳永。自らを追い込み、苦手な環境に慣れる。不得意とするのは重圧のかかる一対一の試合。解決するため、部員に試合形式の練習を持ちかけた。さらにノルマ以上のトレーニングも重ね、体力を強化。緊張状態でもフォームを保つ盤石な強さを身に付けた。 今試合で遺憾なく練習の成果を発揮。アーチェリー最高峰の舞台で、重圧に屈することなく好成績を手繰り寄せた。「結果を出せたが気は抜けない」と徳永は語る。今年の目標は、社会人も含めた大会でより活躍すること。勝利に甘んじず、日々精進。次なる的を見据え、彼女は今日も弓を引く。
(前原梨乃)
【陸上競技部】目が離さない脅威のラストスパート! 期待のランナー誕生! 小川 個人選手権5000㍍ 2位 「自分のテンポで崩れず走れた」
学生日本一を決める最高峰の舞台・個人選手権。1年生の小川が、5000㍍で2位と大躍進! 経験値こそ少なかったものの、全国の実力者たちを相手に競り勝った。高校時代は全国のステージで苦渋を味わう。今大会では磨いた持久力が光り、リベンジを果たした。
課題をゼロに
フィニッシュラインを通過し、笑みを浮かべる。全国の舞台で、快挙を成し遂げた陸上競技部の新星・小川。入学後初の表彰台で喜びをかみしめた。 昨年の全国高校駅伝では1区を任される。好位置でレースを展開するも、終盤に失速。持久力不足により上位から離されてしまう。「最後まで先頭についていきたかった。」 体力に悔しさが残るレースを経験し、さらなる成長を心に誓った。 大学ではスタミナ向上を目指して、400㍍ごとにペースを上げる長距離走に注力。最初は先頭集団に付いて行くことだけで精一杯だった。全体のメニューに慣れるため、ラップタイムを設定した自主練習を取り入れる。日を重ねるごとに目標の時間が縮まり、速度を落とさずに完走できるまでに成長。入部後の長距離記録会では、5000㍍走において自己ベストを更新する。高校時代よりも自身のタイムを上げ、終盤でも勝負できる選手に進化した。 「どこまで自分が通用するか楽しみ。」 高校時代の悔しい思いを忘れず、練習に取り組んだ小川。得た成果は日々の努力のたまものだった。
苦心を成就
大会当日、アップから体はよく動いて手ごたえは十分だった。少しの緊張とともに、スタートの合図を待つ。「実力者たちについていく。」 自分を信じて、挑戦者の気持ちで臨んだ。 号砲が鳴ると、好スタートを切った小川。先頭集団に加わり、良い位置でレースの様子をうかがった。相手がスパートをかけても対応できるよう、常に集団の中で上位を維持。最後のスピード勝負に向けて、余力を残した。 試合が動いたのはラスト1周。全体のペースが上がり、激しい上位争いが繰り広げられる。トレーニングで培った持久力は、残り100㍍で発揮された。優勝候補の村松(立命館大)と競り合う中、ギアを上げて差を広げる。苦しい表情を浮かべるもスピードは落ちなかった。わずか0・3秒差で勝負を制し、結果は2位。日本人の中ではトップの記録を樹立する。鍛え抜いた体力が、接戦を勝ち取るための武器となった。 「まずは日本の大会で活躍できる選手になりたい。」 次に見据えている目標はインカレ入賞。今後も厳しい競争に挑み続け、絶対的エースの地位を築いていく。成長著しい新人の戦いは幕を開けたばかりだ。
(山口隼輝)
【自転車競技部】ひたむきな精励が成した王者の技巧 力戦奮闘!史上3人目の覇業 絶対的エース 中島 RCS年間総合 2連覇 「苦境の中でも声援が力になった」
全6シリーズにわたり開催されたRCS。日本屈指の実力者たちが学生チャンピオンの座をかけ競い合った。そして迎えた最終戦。中島は連覇への期待を背負いながら、再び総合優勝を飾る。快挙達成の裏には、自転車競技に対する真摯(しんし)な努力があった。
執念の逆転劇
立大のエース・中島が自転車競技の歴史に名を刻んだ。史上3人目となるRCS2連覇。昨年度覇者は重圧をはねのけ、王座を守り抜いた。 初戦で優勝を果たし、以降も首位をキープ。順調な滑り出しだったが、頂点への道のりは甘くなかった。プロ活動との両立により疲労が蓄積。さらに欠場も重なり、最終戦前に順位を2位に落としてしまう。再び調子を上げるのは難しく、連覇は厳しいと思われた。 命運をかけた最終戦が行われたのはコーナーが多い神宮外苑。難路での走行を得意とする中島には絶好の舞台だった。素早い立ち上がりで他の選手との差を広げる。複雑な経路を効率よく走り体力を温存。最終スプリントでは力を振り絞り、快走を見せた。最後まで混戦状態の中、驚異的な追い上げの末に4位入賞を果たす。結果ポイントで相手を上回り、逆転に成功。見事2度目の総合優勝を飾った。 「プレッシャーもあったが、いい方向に働いた」。 最終レースは大学入学後、初の有観客試合。サポーターの声援も大きな後押しとなった。表彰式では、これまでよりも多くの歓声を浴びる。期待と重圧の先に見た日本一は新たな景色だった。
まだ見ぬロードへ
学生でありながら、プロとしても競技を行う中島。チームメイトに比べて練習時間が取れない中でも、周りに必死に食らいついた。より速く走るために、試行錯誤を繰り返す日々。格上相手にハイレベルな実戦経験を積む中で身につけたのは、周囲の状況を冷静に把握できる視野の広さだった。 高水準のレース経験は連覇に向けて大きな強みとなった。試合では次の展開を正確に予測して、自らに有利な位置取りを行う。戦略面での成長を遂げ、勝利を重ねていった。 2連覇を意識し始めたのは10月。プロシーズン終了後から、総合優勝に向け動き出す。最終戦で逆転するため、体のケアを怠らず試合に備えた。日常生活でもイメージトレーニングを行い、練習以外の時間も常に競技と向き合う。ひたむきな努力と不屈の心が2連覇を手繰り寄せた。 昨年でプロの活動を終えた中島。今季はインカレ優勝と史上初のRCS3連覇を目標に掲げた。偉業達成に向け誓ったのはさらなる躍進。勇猛無比の王者は前人未倒の領域へ向け、ペダルをこぎ始めた。
(佐藤稜真)