【ソフトテニス部女子】4年生卒業記念 「当たり前への感謝」 石田恵美莉主将

石田恵美莉(文4)が競技を始めるのはもはや必然だった。家族全員がソフトテニスをやっていた影響で、小学3年生の3月に地元・福島県のクラブチームに加入した。週5日の練習もあってかすぐに頭角を現し、小学6年生の時には東北大会で勝てるまでに腕を上げた。中学校は学区の西郷第一中学校へ。全国大会優勝実績もある強豪だったが、日本一には届かなかった。

日本一を目指して

夢を叶える場所に選んだのは三重高校だった。「楽しい!って思いながらテニスしていた」と当時を振り返る。慣れない土地での寮生活や強度の高い練習メニューなど、環境は大きく変わった。しかし、全国から日本一を目指して集まった仲間との生活は居心地が良かったという。
「勝ちたい」気持ちは、いつしか「勝たなきゃ」という義務感に変わった。石田の1つ上の代は、団体戦最強世代。全日本選抜大会で優勝、インターハイ・国民体育大会で準優勝と黄金時代を築いた。石田は土井(21年度卒)からキャプテンのバトンを引き継ぎ、新体制がスタートした。しかし、全日本選抜大会の前哨戦となる大会で準々決勝敗退。自分の試合さえ上手くいけばいい。勝利への責任感から皆が自分のことで精一杯だった。連覇を狙う全日本選抜大会を前に、焦りと不安でチームはバラバラになった。

「なんで日本一になりたいの?」

「今まで支えてくれた方にありがとうって伝えるためじゃないの?」
関係者からの問いかけに、石田は意表を突かれた。当たり前のように享受してきた日本一を目指す環境が、実はたくさん人に支えられていた。自分が試合に出るために準備をしている仲間。テニスコートまでの送迎をする先生。寮での生活費や学費を払う親。勝利に躍起になっていたから気付けなかった。勝利に集中できるほど、環境に恵まれていたからだ。「支えてくれている人に恩返ししたいから勝ちたいんだ」。結束を高め、再スタートを切ったチームは全日本選抜大会で連覇を達成。石田は決勝で2番手の大役を果たし、日本一に大きく貢献した。今でも、人生で一番うれしかった経験として心に刻まれている。

競技人生の集大成

人格を形成してもらったソフトテニスに恩返しする思いで立大に入学。3年生で主将になると、1部昇格、インカレ団体優勝に並んで人間性の成長を部の目標に掲げた。真意を尋ねると、「立大ソフトテニス部に入ったことで社会でも評価されるし、自分から人のためにできる人になろうって思える部にしたかった」という。多くの試合で有観客が再開された昨シーズン。試合後、応援に駆けつけた人に自ら感謝を伝える仲間を見て、確かな成長を感じた。他者への思いやりこそ、石田が競技を通じて得たものだ。そして今春、13年間の競技生活を胸に新たな門出を迎える。

(3月31日・安倍のぞみ)

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