【軟式野球部】明日、秋季リーグ最終戦!“どん底”だった春からの道のり
小野路球場の曇天を吹き飛ばさんばかりに、選手たちの闘志は燃えていた。「今日のためにやってきたようなもんだから」。円陣の中心で、主将・岩田(文3)は士気を高める。9月29日、六大学優勝の可能性を残す法大と立大との直接対決。暫定首位の法大にとっては、ここで立大を下せば優勝が決まる。なんとしてでも白星を奪い優勝への望みをつなぐべく、立大ナインは試合に臨んだ。
厳しい立ち上がりだった。先発は石川(コ3)。初回から、先頭打者の二塁打をきっかけに先制される。さらに四死球にボークが重なりもう1失点を喫した。しかしその後は走者を出すも、7回まで三塁を踏ませず、粘りの投球を見せた。石川に応えたい立大打線は6回に反撃を見せる。濱谷(文3)が死球で出塁すると、続く橋本(法3)の内野安打で二死一二塁。さらに矢吹(文2)の適時打が飛び出し、1点を返した。このまま点差を縮め終盤に流れを持っていきたい立大だったが、7回に本田(社3)が二塁打を放ち好機を迎えるも得点には至らず。8回には追加点を許し、勝ち越しはかなわなかった。9回を終えて1―3。悲願の優勝は消えた。
試合後、ミーティングの中心に立った男は涙を浮かべた。この日にかける思いが強かっただけに、悔しさも大きい。それでも「勝ち負け関係なく言うと、3年間やってきて最高の試合だった」と、言葉を絞った。
2連覇した昨年度からの、凋落。部活に行けなくなった
早い段階で岩田の主将就任が決まってから、昨年度の新人戦では春・秋ともに立大を優勝に導いた。しかし、ラストイヤーであり本格的に主将としてチームに立つ年である22年度の春季リーグでは、最下位に沈む。泥沼と化した不調は、部員たちを苦しめた。「本当にどこにも勝てなかったし、ボロボロで、みんな野球が楽しくなくて」。次第にチームメイトとの不和も生じ、ついに気持ちが切れる。部活にも学校にも行けなくなった。2カ月間、誰の前からも姿を消した。
大学生活懸けようと思って
そんな岩田にチームメイトは温かい声をかけた。「いつでも帰ってこいよ」。同期も後輩も、彼の復帰を望んで連絡した。その結果、「部活に何か残したい」という思いが勝った。長かった髪を坊主にしてチームに戻ると、岩田の覚悟に呼応するように、真似して頭を丸める部員がいた。全員と、1週間で30時間は話した。選手ともマネージャーとも、部活について徹底的に語った。
「軟式野球部に大学生活懸けようと思って、もう大学生活の中の遊びとか友達とか全部捨てた。それでしか優勝できないと思ったから。そしたら雰囲気も良くなって。ここまで優勝争いできるまでになったのはチームとしての成長。野球というスポーツを通して、チームワークや人間性の重要さを、大人がいない軟式野球部だからこそ学べたと思います」。
明日10月18日、秋季リーグ戦の最終試合が行われる。岩田世代最終章を、笑顔で締めくくることができるか。
(10月17日・菅野真理香)