【スケート部フィギュア部門】岩崎・佐藤・伊勢山、目指した「自分の滑り」で表彰台へ!
◆第94回日本学生氷上競技選手権大会◆
1月4〜5日 帯広の森スポーツセンター
1月4〜5日、北海道・帯広でインカレが開催され、立大からは東日本インカレを勝ち抜いた主将・岩崎(現4)、佐藤(異4)、伊勢山(営2)の3人が出場した。4級女子では岩崎が45.99点で1位、佐藤が37.42点で8位に入賞し団体1位、5級女子では伊勢山が53.21点で3位と堂々の成績を収め、全員が表彰台にのぼった。
今大会は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため無観客で行われ、事前のPCR検査を通過した選手・監督・大会関係者のみが現地入りした。
4級女子
インカレ出場は2年ぶり3度目の岩崎。過去2大会では3級女子4位、4級女子8位と好成績を収めてきた。引退シーズンである今季、岩崎が目指したのは「自分らしく、見ている人を惹きつける演技」。そのために“反復練習”と“スケートを楽しむこと”を徹底した。成功のフォームが体に染み付き、肩の力が抜け、曲の流れの中で自然とエレメンツ(シャンプ・スピン)がハマっていく感覚を得た。東日本インカレ1位で通過後には「昔と違って今はエレメンツの成功率ではなくて自分の滑りを魅せることに重きを置いていて。しっかり自分の滑りができれば上手くいくし、インカレでも優勝できる自信がある」と、手応えを感じていた。
曲は『I Belong To Me』。スタート位置に着くと大きく深呼吸し、真っ直ぐ審査員を見つめた。冒頭のダブルループを決めると、タブルトウループ+ダブルトウループ、ダブルフリップも綺麗に着氷。苦手としているフライングシットスピンでは着氷が乱れ失速したものの、大きなミスなくしっかり回りきった。その後もキャメルコンビネーションスピン、シングルルッツ+シングルループ+シングルループ、レイバックスピン、シングルアクセルと、予定していたエレメンツを全て決めると最後のコレオシークエンスでは思わず笑顔が溢れ、“スケートを楽しむ”を体現した。
技術点(ジャンプやスピンの点数を示す点)を確実に積み重ね、演技構成点(プログラムの完成度を示す点)とコレオシークエンスの加点で他の選手と差を付け、1位。有言実行を果たした。
シングルでのインカレは初出場の佐藤。自身のスケート人生を締めくくる曲は『ノートルダムドパリ』を選んだ。2012−2013シーズンで羽生結弦選手が使用していた曲だ。「毎年全日本選手権を観ていて、今まで観たプログラムの中で羽生選手の『ノートルダムドパリ』が一番印象に残っていた。しなやかな部分と力強い部分の抑揚があって素敵だなって。いつか自分もこの曲を滑りたいと思った」。
しかし、コロナ禍で迎えたラストシーズンは、練習拠点としていたスケートリンクが閉鎖・制限され、思うように練習場所を確保できなかった。「今までよりも1回1回の練習に懸ける思いが強くなった」。他の選手との練習環境の差を練習”量”ではなく、自分のスケート動画を何度も見返し、ミスの原因を考えながら滑るといった練習の“質” でカバーしてきた。12月後半からは地元大阪に帰省し、幼少期にお世話になった恩師のもとで最終調整を行い、インカレに臨んだ。
冒頭のダブルサルコウは軽やかに着氷。公式練習で入念な調整を行っていたダブルトウループは着氷時に体勢が崩れたものの「気合いでなんとか(笑)」と転倒は堪えた。「見せ場」と話していたシングルアクセルは、ステップからそのままジャンプに入る難度の高い跳び方。ステップは体重を乗せるエッジ(スケートの刃)を内側外側・前後で細かく切り替えるため失速しやすいが、アイスダンスで培った正確なエッジワークを生かし、スピードを落とさず流れのあるアクセルを決めた。その後、キャメルコンビネーションスピンはバランスを崩す場面もあったが、フライングシットスピン、シングルルッツ+シングルトウループ+シングルループ、シングルフリップは柔らかい着氷で決めた。コレオシークエンスは『ノートルダムドパリ』の曲調に合ったしなやかで力強い滑り。最後はスピードも回転数も充分なレイバックスピンで演技を終えた。
後輩の伊勢山は「佐藤先輩のスケートは本当にかっこよくて。自分の滑りを持っているというか、体の使い方とか軸の取り方とか真似しようと思ってもできない」と話す。佐藤は総合点では8位だったが、演技構成点だけを見れば岩崎の26.66点と互角の23.73点で3位。スケーティングの美しさや表現力、ミスを最小限にとどめ最後まで強い気持ちで踊り切るスケーターとしての姿勢が評価された。佐藤の強みが光る演技だった。
4級女子団体においては、個人順位1位の岩崎が15点、8位の佐藤が8点を獲得し、計23点で優勝に輝いた。
5級女子
インカレ初出場の伊勢山。2年間滑り込んできたプログラム『To Love You More』を踊るのは今大会で最後と決めていた。『To Love You More』は2018−2019シーズンにマライア・ベル選手が使用しており「すごく楽しそうに滑っているのが伝わって私もやってみたくて」と、心を打たれた曲。佐藤も「あかねちゃんは本当にいつも楽しそうに滑ってる」と話し、伊勢山の想いが溢れるプログラムだ。「最後だから完成した形で終わりたい。それ以上にこの曲をやってよかったと思えるように、見ている人の心を動かす演技ができるように踊り切りたい。そうすれば自ずと結果も付いてくると思う」。
公式練習ではジャンプを入念に確認していた。普段とは異なる感触の氷に「(氷が)硬いから跳びすぎちゃう。無理やりタイミングを合わせにいってる感じ」と話しつつ「やれないこともない」と冷静さを保っていた。
迎えた本番。冒頭のダブルルッツ+ダブルトウループ+ダブルトウループの3連続ジャンプを綺麗に決めると、続くダブルフリップ、シングルアクセルも流れのある着氷。本番までにしっかりとジャンプを調整してきた。その後、フライングシットスピンではバランスを崩す場面もあったが、ダブルループ、ダブルルッツ、ダブルフリップ+シングルアクセル、レイバックスピンは難なく決めた。
伊勢山のプログラムの魅力は「音ハメ」だ。演技中はエレメンツに集中するあまり曲のカウントを気にすることができなかったり、転倒によって振り付けが抜けたり遅れたりすることもあるが、伊勢山は常に同じタイミングで確実にエレメンツを決めることができるため1つ1つの音と振り付けがぴったりと一致している。これによって表現がより一層観る人の心に届き、プログラムの完成度も高まる。
見せ場は演技終盤、音が消える一瞬の間。「疲れていても『もう一度踊ろう』ってスイッチが入るところ」。伸びのあるスケーティングと柔らかな表情で『To Love You More』の世界に引き込むステップを魅せた。最後はバックエントランスからのキャメルコンビネーションスピン。気迫のこもった演技を魅せた。
これまで立大フィギュアスケート部の監督を務めてきた藤岡さんは「演技中の掛け声とか拍手とかって選手は結構聞こえてるんだよね。今まで応援に励まされていた選手には無観客の雰囲気はやりづらかったと思う」と話す。また、「フィギュアスケートはタイムとかスコアとか記録だけのスポーツじゃないからね。観てくれて、感動してくれる人がいるから力を出せるスポーツ。だから人の心に届く演技をしないと。それは自分がどういうスケートをしたいのか分かっていないとできない」。
3人それぞれがプログラムに想いを込め「自分の滑り」を追求してきた。その力強い演技は、有観客であれば間違いなくスタンディングオベーションに包まれただろう。
(1月20日 大上文・大類遥)