【男子ラクロス部】SAINTS大好きっ子と反骨心みなぎるファイター。 泣いても笑っても最後、勝負の4年目。
「こいつだけよ、せっかくのオフを早く終われとか言ってんの」。主将・柳井(済4)も苦笑いするしかない。オフ明け、嬉々とした顔でグラウンドに来るのはSAINTSの元気印・宮本(済4)だ。
「オフ期間中はやっぱみんなに会いたくて仕方ないのよ、オフなんか早く終われ早く終われって。」
自他ともに認めるSAINTSのムードメーカーは、アップ中から雰囲気づくりの中心を担う。
どこからともなく飛び交う「カズシゲ声出せぇ!」の声に宮本が応えるのは恒例行事のようなもの。根がマジメなムードメーカー、この1年生の時から変わらないキャラクターに惹かれるチームメイトが多いのもうなずける。
今まで練習の遅刻はゼロ。もちろんズル休みなど一度もない。「みんなに会うために練習に来てる」とおどけるSAINTS大好きっ子だが、今までリーグ戦の出場経験はない。2・3年生ではほとんどBチームに所属しその中のATでさらに5番目だった時期もあったという。
「高校野球部時代も、練習したけど試合に出られなかったんだよね。でもそこで腐らずに練習し続けられたのは今でも絶対に活きてる。自分が好きで選んだラクロスで、好きな同期と試合に出たいってのはずっと思い続けてたよ」
就活中もトレーニングを続け、チームで定めたフィジカル基準もすべてクリアした。そんな宮本が浮上するきっかけとなったのは今年の六大学戦、早大戦だ。コーチの進言で得た数分の出場機会を見事にモノにし、得点を挙げる。その後も出場機会を増やし、本田(コ4)、高島(済3)に次ぐ3枚目のATとしてリーグ戦スタメンを勝ち取った。
「俺なんか全然、スタメンなんか運だって。でも試合に出るからには絶対に点取るよ」
最初で最後のリーグ戦。声出し枠やお笑い枠なんかじゃない、純粋な「点取り屋」として矜持が垣間見えた気がした。
昨年Bチーム主将を務めた小川(社4)。チームの副将となった今でも、自身が当落線上にあるという危機感は隠さない。そのモチベーションの源は何なのか聞いてみた。
「プライドよプライド。高校まで試合に出てたのに、大学では試合出られないのがもどかしかった。就活の自己分析じゃないけど、俺が命かけて努力するときは必ずなんか挫折があんのよ、Bに落ちたとか。だから反骨心がすごいあるんだと思う、自分はAにいる人間だって」
高校時代はサッカー部で勝利に貢献し続けてきた彼にとって、大学で始めたラクロスでベンチを温めている現状は絶対に許せなかった。だが骨折や肉離れなどのけがが相次ぎ、満足なプレーができない日々が続く。出遅れを取り戻せないまま、後輩や同期がAチームで活躍するのをもどかしくも見守るしかなかった。
そこであったのがBチームの学生コーチへの打診。小川が得意だったコーチングを見越しての要請だった。
「めちゃくちゃ迷ったよ。正直、あの激しいAチーム競争から逃げられると思っちゃったし。でもやっぱり今の俺がコーチを引き受けるのは逃げだっていう思いもあったんだよね。」
それでも小川はプレーヤーにこだわった。MGの土居(社4)に言われた、「アンタ、コーチをやるためにSAINTSに入ったの」という一言も小川の判断に背中を押した。プレーヤーとして俺が勝利に貢献する。当落メンバーの変遷を見てきたからこそ、4年生ながら危機感はかなり強い。
「1個のパスミスでもBに落とされるって思いながらやってるよ。ほんとに命がけでくらいついて練習してると思う。」
小川にとってもこの最後の一年は勝負の年となる。コーチではなく選手という選んだ道を正しいものとするために、自分が試合に出て、活躍する。このエゴが、執念が、小川の強烈なエネルギーになっていることは間違いない。
(8月18日・取材/文 山田裕人)