【ボート部】祝!立大ボート部史上初、女子エイトがついに日本一に輝いた! メンバーそれぞれの、奇跡への軌跡④~日比野真奈・小塚梨央~
◆第97回全日本選手権大会◆
5月23日~26日 埼玉・戸田ボートコース
唯一の1年生クル―!期待のルーキー・日比野真奈(社1)の奇跡への軌跡
必死に先輩たちの背中を追い続けた。岐阜県加茂高校からやって来た日比野は、クル―唯一の1年生。技術面が他メンバーに比べ劣ると感じていた彼女は、気持ちだけは負けない意識でオールを漕いだ。スウィープ種目(1本のオールで漕ぐ種目。エイトはスウィープ種目に該当する)に挑戦したのは、大学に入学してから。簡単に慣れるものではないが、出られなかった仲間の気持ちを背負い、U23日本代表候補の角谷(コ4)をはじめとする最強クルーに食らいついた。
多くの先輩に助けられた。毎回の練習でアドバイスをくれる佐藤理(観2)や、部屋に戻ると声を掛けてくれる角谷。道に迷わないよう、お姉さんたちは日比野の手を握り続けた。
決しておんぶに抱っこだったわけではない。角谷は日比野のことを“フレッシュな風”と表現。慣れない種目でも、上級生に囲まれていても、彼女は懸命に練習に励んだ。「ちょっとは成長しているのかな」。新品のスポンジ同様、新入生は今大会を通して多くのことを吸収した。
決勝戦は、自身の漕ぎに全神経を注いだ。他チームのことは気にせず、とにかくついていく。船のリズムを崩さないよう、精一杯やれることをやった。大会後には、「嬉しいというか、良かったの一言に尽きると思います」と安堵の一言。数々の先輩たちが挑戦し続けてきた歴史を、入部してたったの2ヶ月半で背負った。そのプレッシャーは計り知れない。だが、期待のルーキーはその重圧に押し潰されることなく、最後までオールを漕ぎ切った。
大学に入学してから3大会に出場し、未だ無敗。規模はそれぞれ違うが、今大会優勝で3つ目の金メダルを手に入れた。「今後も結果をどん欲に求めていきたい」。1年生にして日本一からの景色を見た彼女は、今後どのような道を歩むのだろう。ピカピカの1年生が描く物語は、まだ始まったばかりだ。
日本一のコックスになります!熱血舵手・小塚梨央(観4)の奇跡への軌跡
コックス=舵手とは、船の舵を取るポジションである。後ろ向きで漕ぐ漕手とは違い、唯一ゴールを見て進む。仲間への声掛けも非常に大事な役割であり、コックスの声が勝敗を左右するといっても過言ではない。ボート部の新歓パンフレットには、「絶対的な信頼関係を築きあげた上に成り立つポジション」と書かれている。
小塚はもともと漕手だった。クルーの中で唯一大学からボートを始め、過去3年間は必死にオールを漕いできた。転機となったのは、昨年秋。どうすればチームが日本一になれるか考えた末の決断だった。
自分の声掛けがチームの命運を決める。当然、不安はあった。今年のクルーには力があると感じていたからこそ、なおさらプレッシャーは大きい。「皆を最大限に活かすのが自分の仕事」。最上級生になる時期の転向は、そう簡単なものではなかった。
決勝戦のテーマは後半勝負。レースが始まると、他チームがスタートダッシュを決めた。立大もスタートが苦手なわけではなかったが、自分たちの強みは後半。前半は、離されないことが肝心だった。3位でのスタートに不安を覚えたメンバーもいる。だが、小塚の「絶対大丈夫!」という声掛けが、漕手たちの希望となった。
そして、勝負の終盤。4年生舵手が発した勝負の一声が、水上にこだまする。すると船は加速し、前を走るチームを抜き去った。しかし気は抜けない。一度は抜いた明大が、すぐそばに迫って来ていた。ゴールラインを切り、ブザーが鳴る。後続のチームを見ることのできない小塚には、はじめ自分たちの勝利が分からなかった。「勝ったのかな?」。目の前に座る角谷が、満面の笑みでハイタッチを求めてくる。周囲の雰囲気から、夢を叶えたことを確信した。「やったー!」。新人舵手は思い切りガッツポーズし、4年間共に戦ってきた戦友と手を合わせた。
大会後小塚は、「皆を1番にできるような、日本一のコックスになれるように頑張ります!」と今後の目標を大声で語った。そこにはあと少しで引退という空気感はなく、まだまだ進化していくという決意が込められていた。最後の最後まで、チーム随一のチャレンジャーは歩を進めていく。
(取材・五十川遼太、濱渡晏月、洞内美帆/文・合田拓斗)