【野球部】桐光出身の記者が見た立大のサブマリン 中川颯の軌跡と挑戦③~栄冠と苦難を授かった新入生
“絶対的守護神” 初めて微笑んだ勝利の女神
大学入学後、彼のデビューは鮮烈だった。2017年4月15日法大1回戦の9回。真新しいユニフォームを着た背番号#15が神宮のマウンドへと現れた。初めて彼を見た方も多かっただろう。「いったいどんな選手だ?」と疑問、期待が彼に向けられる中でのデビューとなった。130㌔台中盤の浮き上がるような直球と左右に投げ分けられる変化球で打線を翻弄し、延長12回には中山(現ヤクルトスワローズ)などのクリーンナップと対峙しても直球でねじ伏せた。4イニングをわずか45球、無失点で抑える。圧巻の投球で観客へ挨拶をした。怖いもの知らずの一年生はその後も試合終盤や逆転の危機での投球を任され、立大の勝利を呼び込んだ。いつしか“度胸満点のサブマリン”と呼ばれ、「彼が出てくれば勝てる」そんな雰囲気さえも呼び起こす“絶対的守護神”へとのぼりつめる。そしてついに成し遂げた35季ぶりのリーグ戦優勝。65年ぶりの全国制覇。最後のマウンドにいたのはほかでもない彼だった。
試合の直後、多くのメディアに取り上げられ、名前は一挙に全国区へと知れ渡る。この時ばかりは「予想外だった」と本音が漏れ、初めての全国制覇に頬は緩んだ。今でも一番の思い出は池袋キャンパス周辺で行われた優勝パレードだ。
華やかな栄光の裏にある苦悩
鮮烈デビューを飾った春季リーグ。だがその後は苦悩の連続だった。結果を出した分、当然ながら相手チームからのマークも強くなっていった。普段通りの投球でも打たれ、ペースを乱し、四球がきっかけで失点する場面も見られた。「調子が悪いなぁ…」ブルペンでは首をかしげ何度も自分の投球フォームを見直し、登板に備えた。毎回、試行錯誤の繰り返しだった。
1年次のリーグ終了後は再起を目指し、防御率0点台を掲げ、キャンプでは自他ともに好調を見せた。だが迎えた2年次の春季リーグの防御率は6.17。後半から思うような投球が出来ず、一時はベンチから外れることもあった。秋季リーグでも法大2回戦に3点を失い、逆転を許すなど、復調の兆しは一向に見えない。研究される以上の投球をしなければいけないリーグ戦独特の壁に苦しんだ。
④~復調と新しい自分への挑戦に続く
(4月11日/取材・文 山口史泰)