【アイスホッケー部】『4年生卒業企画~もうひとつの氷上奮闘記~』立大アイスホッケー部を象徴する、尾池忠の人間性
競技人生最後の試合が終わった後のインタビューに、副将・尾池忠(おいけただし・済4)の人間性が凝縮されていた。「引退の実感はないわけではないけど…。大宮(コ4)の怪我が心配」。立大は2018年12月25日、インカレ初戦で日体大に0-14で負け、4年生はこれがラストゲームになった。引退の思いを聞くために質問していたが、尾池の言葉がたどり着いたのは、試合で負傷し病院へ向かった主将への気遣いだった。
常に、献身的な姿勢でチームを支えてきた。2年で副務を務め、3年では主務として裏方業に徹した。「主な仕事は部の口座の管理。部費を集めて、大会があるごとにメンバーの登録や保険加入とか。OBとのやりとりから合宿の手配、打ち上げの段取りも全部」。ひたむきな姿勢が評価され、4年になると、投票で副将に選ばれた。試合に出る時間は短くとも、「チームにとってなにが最善かを考えるだけ」と、試合前のミーティングを変え、ベンチでは誰よりも声を張り上げた。そんな中でも、主役を張った試合がある。2018年12月3日、リーグ最終試合の日大戦だ。3セット目ながら、前年まで1部Aで戦っていた相手から、公式戦初となる得点を決めた。下級生の頃から、隠れて自主練に励んだことが実った瞬間だった。献身性に加え、努力が実ったことをふまえ、関口(法4)は「立教を象徴する選手。尾池の性格が、立大アイスホッケー部の理想」と表現する。
しかし、努力家のイメージを本人は否定する。これまで、1つの競技に打ち込んだことはなかった。むしろ、高校テニス部は2年の夏で辞めてしまい、「運動部の肩書きを手に入れて、原付で通学するために入ったぐらいで、幽霊部員だった」と自嘲するほどだ。そんな選手が、なぜ頑張ることができたのだろう。その問いには、「仲間が受け入れてくれたから」と即答した。細谷監督(当時)が、「今まで見てきた中でも、凄く良い代」と認めるほどの絆が、4年間を駆け抜けることができた原動力だった。
引退に際して書かれた、部のHPにある「氷上奮闘記」では、このようにつづっている。「私は立教大学体育会アイスホッケー部が大好きであり、この部で4年間を過ごせたことを本当に感謝しています。これからはいちOBとして、この大好きな部活の力になれればと思っています。そして現役の活躍に心から期待しています」。卒業後は某食品メーカーで働く尾池さん。これからは、立大アイスホッケー部だけでなく、日本の台所も支えてくれるに違いない。(3月31日 取材/編集:浅野光青)