【ホッケー部女子】4年佐井と2年市村。学年を超えた絆が生んだ最終試合での感動秘話
25日、立大は池袋キャンパスにて卒業式を迎えた。23日の学部卒業式と合わせ、4年生をキャンパスで見かけることは今日でおしまいである。2018年度体育会スローガン「愛される体育会」とも、お別れだ。本特集はそんな愛される1人の体育会4年生と、後輩の話。記者がどうしても伝えたい、ホッケー部の絆の話なのである。
チーム2018には佐井柚子(コ4)と市村美友樹(コ2)、2人のGKがいた。ポジションが1つに対しての2人の争いは、一方の控えが確定する残酷なポジション。でも、これはただのポジション争いではない。絶対的守護神と、その後釜の2人でつかんだ1つの勝利の物語――。
10月14日の秋季リーグ第3戦、チームは上位進出に向け、負けられない格上・早大との一戦を迎えていた。敵地・早大東伏見キャンパスには明らかに緊張の色が見える立大イレブンがいた。グラウンド最後尾に立つ “レギュラー”佐井の顔もまた、ヘルメット越しの緊張が。試合は立大が先制も第3Qまでに同点に追いつかれ、最後第4Qでの決着とまさに死闘だった。人一倍責任感の強い佐井は、クオーター間の休憩も普段とは違い1人で集中を図る。いつもと明らかに違う守護神は、第3Qまでの失点に動揺を隠しきれていなかった。続く第4Q、立大ディフェンス陣は攻め込まれ失点。競合相手に先制するも、あと1点に泣く結果となってしまった。実質、今季の上位進出可能性がなくなった敗戦に、試合後の選手からは大粒の涙が。そして、佐井は開口一番、「やり直したい」との一言と共に我慢していた涙をこぼした。
敗戦から約1カ月。8校の上位4位進出が不可能となったチームは、5位を目標に再設定し最後の力を振り絞った。順調に順位決定予選を勝ち進み、11月10日、5位決定戦。奇しくも相手は1年間目標と定め、ブロック違いで対戦がかなわなかった慶大。負けるわけにはいかなかった。
早大との敗戦と同じく、僅差のゲームが続いた。2Qで先制を許すと、第4Qで何とかに同点に持ち込む。試合はSOと呼ばれる、キーパーと攻撃側の1対1による対決で決することとなった。
「柚子さんのために何ができるか考えて、自分から話しかけました」。佐井が早大戦で使い方に迷ったクオーター間。後釜・市村は佐井をボール蹴りに誘い、守護神の集中力維持に一役を買った。GKに転身するきっかけも、つらいときの相談役も、市村にとってホッケー部の活動のすべてを支えてくれた先輩を思えば、必然の行動だった。
アドバイスがあるわけでもない。ただ、無言でボールが2人の脚から放たれる。言葉を発せずとも、ボールを蹴りあっている2人は次第に笑顔になっていた。「(SOを)絶対止めてやると思った」。
もはや決められる気がしなかった。SO戦の練習をあまり積んでいない佐井だったが、体重移動を意識した防衛で相手を上回った。相手の揺さぶりに負けず、なんと3度もセーブに成功。佐井1人の力ではない無限の力が、彼女のプレーを勝利に結びつけた。
試合後、4年生最後の試合とあって下級生との写真撮影の中、2人が撮影を依頼してくれた。レンズに映る2人の笑顔に、同じポジションを争う2人とは思えない絆を感じた。師弟関係は写真に残さずともこれからも続くだろうと思いつつ、満面の笑みの2人のシャッターを切った。
(3月25日・川村健裕)
“柚子さん”から“美友樹”へ後輩にかける思い
「美友樹は特別な存在。キーパーならではの悩みがあっても、『大丈夫ですよ柚子さん』って言ってくれて。感謝しかないです。美友樹の成長はこれからも見届けます」
“美友樹”から“柚子さん”へ先輩に語る今だからこその感謝
「4年間お疲れ様でした。そして、2年間お世話になりました。最後の最後まで勇姿を見せて下さってありがとうございました。私にキーパーになるきっかけを与えて下さり、一緒に練習を乗り越えて来たということ一生の思い出です。できないできないと最後の練習試合で悩み悔しがってたSO戦も、締めくくりの5位決定戦ではしっかり守れたのも、前を向いて上手い人のやり方を参考にしたり、動画(部で共用のYouTubeアカウントに「ホッケー キーパー」の検索履歴が残っていました!)を見たりと努力してきたからだと思います。私もそんな姿勢を大切に、やるべきことをやって、周りの人からアドバイスをもらいながら成長していけたらいいなと思っています。これからは、立教のキーパーって今年も上手いなぁとか去年のキーパーよりも上手いなぁとかって思われるように頑張ります!柚子さん越えます!」
~編集後記~
私の学生記者生活はホッケーに始まり、そして今日ホッケーに終わろうとしています。約3年前、担当6部が決まった翌日に行った慶大日吉キャンパスでのホッケー取材。ルールも知らないながら、早速ホッケーに惹かれた自分を今でも思い出せます。その後も当時の主将・上瀧くるみさんへの特集取材や、体育会行事を通して出会った柚子さん、美友樹ちゃんとの出会い、そして学生記者として最後の記事を書いているこの時間。この部で活動したからこそ見つけられた幸せな時間でした。ホッケー部の皆さん、本当にありがとうございました! 4年生の皆さん、柚子さん、ご卒業おめでとうございます。