【拳法部】最強拳士×最高主将=新井佐保 最後の大会で4年生に訪れた笑顔
♦︎第63回全日本学生拳法選手権大会♦︎
11月25日 大阪府立体育館
「疾(はや)きこと風の如く、徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し」
11月25日、大阪府立体育館にて、第63回全日本学生拳法選手権大会が開催された。女子団体の部において、立大からは主将・新井(現4)、1年生・高橋(現1)の2名が出場。2回戦で敗れたものの、新井は2戦を30秒で終わらせるという圧倒的強さを見せつけ、最後の大会を華々しく終えた。
「立教大学」と書かれたプラカードを持った高橋を先頭に、戦いの舞台へ向かう。最後の大会でも、主将の視野の広さは変わらない。常に周りに気を配り、仲間を励まし続ける姿がそこにはあった。「歩実ちゃん(高橋)らしくノビノビとやってくれたらいよ。私がいるから大丈夫」。
憧れの先輩から声援を受けた高橋は、気合・やる気共に満々だった。「(緊張は)している場合じゃない。とにかく勝つ」。長い脚を生かした蹴りを中心に、試合の流れを掌握していく。15秒に面突き、32秒に面蹴りを決め、勝利。先輩に最高の形でバトンをつないだ。
この日の主将は、いつにも増して最強だった。その戦いっぷりは、まさに風林火山。相手の攻撃を素早くかわし、攻撃の機を静かに待つ。一瞬の隙を、新井は逃さなかった。ズドン!試合時間はたったの7秒。かの武田信玄も驚くこと間違いなしの、完璧な試合を展開した。
2回戦、中堅の高橋が敗れてしまう。1チーム3人までが出場できる今大会。2人しか出場者のいない立大は、1戦を不戦敗という形で落とさなければならない。ゆえに、高橋が敗北した時点で立大の勝利はなくなった。それでも、主将の目は前を見据え続けていた。勝っても負けてもこの試合で終わり。“最後”だと分かった上で、試合に臨んだ。雄叫びを上げ、ファイティングポーズをとる。開始12秒に面突き一本。存在感で相手を圧倒した。つづく23秒、渾身の突きが相手の腹を突き破った。かのように思われるほどの鋭い突きを放ち、一本。最強拳士最後の試合の、幕が下りた。
試合終了後最初に新井がとった行動は、自分の勝利に喜ぶことではなく、泣きじゃくる後輩の背中をさすることだった。「惜しかったね、本当にいい試合だった」。最強の拳士である以前に、最高の主将。これこそが新井だ。この人間性こそが、彼女の真骨頂なのだ。
男子団体の部では勝利を収めることができず。新井と、犬竹(法4)、本間(現4)、程(コ4)の男子3人を含めた4年生は、この日をもって引退となった。「4年間があっという間に過ぎちゃった」と話した上で、「同じ目標に向かう仲間と出会えて幸せ」と程はほほえむ。体感がどれだけ短くても、彼らの過ごしてきた4年間は確かにそこにある。時間は嘘をつかない。彼らが時間と真摯に向き合ってきたからこそ、最後に笑顔はやってきたのだ。
(12月23日・合田拓斗)
引退後に同期としたいことはという質問に、程は「皆で旅行がしたい」と答える。自らの母国・中国で、同期3人を案内したいという。果たしてその願いは叶うのか。彼らの活動に、引退後も目が離せない。