225号
立教スポーツ第225号
12月6日更新
【スケート部スピード部門】前人未到の大記録!氷上の王は留まらん!!
渡邉インカレ1000㍍4連覇
渡邉瑠(済3)がインカレ男子1000㍍で4連覇を果たした。 初出場の男子500㍍でも優勝し、4年間で8回のレース中7個のメダル獲得となった。その全てが金メダルという大偉業だ。だが、強さの裏には苦しむ時期もあった。強さを求めて韓国へ渡った1年間。理想と現実の差に悩まされた。そんな中で、過去の自分を捨てることを選択した。
大学王者渡邉瑠
学生生活最後のインカレ。とりわけ男子1000㍍には4連覇が懸かっていた。いや応なしにかけられる期待の声。優勝を意識せざるを得ない状況でスタートラインに立った。
ゆったりとしたペースでレースは始まった。序盤から先頭でレースを支配する。「残り8周…5周…」。 アナウンスとともに追走は激しさを増した。
「残り3周」。 背後の選手が仕掛ける。渡邉もスパートをかけた。ペースを乱した後続は転倒する。彼の影を踏む者は誰もいない。終始主導権を握り、圧巻の4連覇を達成した。
異国で過ごした苦悩の1年
16年12月、決断をした。大学を1年間休学。多くのメダリストを輩出したジェモクコーチに師事するため韓国・城南へ渡った。平昌五輪代表の吉永(中京大)や坂爪(18年に引退)をはじめ、世界レベルの選手たちと1日の全てを練習に費やした。「絶対に速くなれる」。そう思っていた。
現実は甘くなかった。どれだけ練習しても吉永、坂爪には一度も勝てない。一時帰国して臨んだ公式戦でも結果はふるわなかった。「スケートしかやってないのに」。 苦しさのあまり練習を無断で休み、カフェに逃げた日もあった。
「自分が変わらなければ」。韓国修行の半分が過ぎた頃に気付いた。今までは環境に甘え、韓国にいれば速くなれると思っていた。そして、再び決断を下す。「ジェモクコーチの指示だけに従う」。 それは10年間のスケート人生で培った全てを捨てることを意味する。不安だったが、何かを得ることに必死だった。戦術から足の動きに至るまで一から土台を作り直した。
生まれ変わった王者の滑り
成果はすぐには表れない。世界の舞台が懸かった大会で失格や予選敗退が続いた。「全然だめだね」と、思わず弱気な言葉が口を突く。だが、「力はついてきている。結果がついてきていないだけ」と、負けた試合も修正点を見つけ、勝利を信じて前を向き続けた。
実を結んだのは、18年3月のジャパントロフィー。見事、総合優勝を飾った。学んだことを自身の滑りとして確立した。
4連覇の瞬間。両手の4本指を掲げた。勝ったらやると決めていた。「良かったわ。疲れたけど」。 そこには韓国で苦しんでいた姿はなく、サバサバとインタビューに受け答えるいつもの彼がいた。(山口史泰)
【水泳部】100背でV3&100平で準V 国内的なし!鎌田かました自己最高!!
鎌田美希(コ3)が海外の強豪ひしめくジャパラで2色のメダルを手にした。100㍍平泳ぎで日本記録を4秒以上更新し、パラリンピックメダリストを上回り銀。100をを㍍背泳ぎは圧巻の金。3連覇を達成し女王の貫録をみせた。
パラリピアンに競り勝ち”びっくり”
メダルは取れないと思っていた。決勝は2人のパラリンピックメダリストと3人。メダルは上位2人まで。「とにかくついていこう」。前の背中を一心不乱に追いかけた。結果は“まさか”の2位。そして自身の記録を4秒55縮める日本新記録。思わずガッツポーズが出た。「勝てると思わなかった」。メダリストに堂々、競り勝った。
勝因は、試行錯誤の末に生み出した泳ぎだ。鎌田の場合足を使わず上半身の力で前に進む。海外のトップ選手にならい初めは足を使って泳いでいた。だが逆に抵抗が増えスピードは落ちる一方だった。パラスイマーは誰かのまねをしても通じない。上半身の強さを全面に出した、オンリーワンの泳ぎが“まさか”の結果を生んだ。
引退レースは2020東京で
日本記録を保持する鎌田にとってライバルは自分だ。見えない敵がもどかしく、苦戦することもある。1年の時は水泳に追われる、そんな生活が嫌だった。「パンピー(一般人)になりたい」。本音が漏れた。だが応援してくれる人を裏切れない。ジレンマに苦しんでいた彼女を救ったのは、意外な選択だった。
2020年引退。区切りをつけるならここだと思った。大学卒業という大きな節目。そして東京パラリンピックに挑戦して終わりたいという強い思いがあった。ゴールが見えたことで水泳に対する姿勢は前向きへと変わった。
今年の3月にも転機が訪れた。きっかけはアジア選考会を控えた時に襲った激痛。足先に膿(うみ)が溜まり義足も着けられない状態に。泳げない日々が5週間も続いた。
しかしその分、復帰後に入った水はとても気持ちがよかった。ゼロからのスタートだからこそ「練習すれば結果は出る」。初めはターンも難しかったが順調に回復。4月には50㍍背泳ぎでベストをマークした。嫌いだった水泳が今では楽しくて仕方がない。
ゴールは遠くない。日本新を出すたびに喜んでくれた人たち。そしてずっと努力してきた自分のために。「引退レースは東京で」。最後の意地は結果で見せる(中條万緒)
【洋弓部】5位から逆転V!2冠達成に大川「今年は良い年」
緑に囲まれる大自然の中で、またもや勝利の女神がほほ笑んだ。五月に全日本を制した大川儀晃(のりあき=コ3)がインカレでも優勝し立大史上初の二冠達成。須藤直輝(済4)は、昨年の8位から4位へ大躍進。立大黄金期の一年を締めくくる集大成となった。
再び獲った金メダル
360度どこを見渡しても木、木、木の世界。迎えた決勝戦。最後の一射は的の真ん中へ。その瞬間、今度は学生フィールド王者の称号も手に入れた。
3日間にわたり行われた今大会。63人で競い合った予選は5位で通過。「納得いく点数ではなかった」。勝ちにこだわる彼は唇を噛んだ。
続く準決勝での相手はまさかの、先輩・須藤。「気の張る試合」だったが、リードが取れてからは順調に差を広げていく。結果は11点差をつけ勝利。学年は関係なかった。
「今日の結果は100点」。決勝では驚異の72点中56点をたたき出した。アーチェリー界の誰もが認める圧倒的フィールド王者は、またもや笑顔で金メダルを勝ち取った。
フィールドを愛し、愛された
半年前の全日本選手権で競り合った相手・大貫(16年度卒=株式会社サガミ)が9月、世界王者になった。以来大川にも注目が集まるようになる。だが「特に気負わなかった」。それは、試合の雰囲気が違うから。社会人もいる全日本選手権に比べ、インカレは文字通り学生のみの試合。周囲には構わずマイペースに練習できた半年間だった。
高校時代はターゲット一筋だったが、兄の影響で、大学入学を機にフィールドもスタート。「フィールドは遊び感覚でできるから好き」。 気付けばとりこになっていた。山で傾斜を見るとつい、自分ならどう射るか考えてしまうという。
今年の大川は、5月の全日本選手権に始まり、今回のフールドインカレ優勝など多くの結果を残した。「なんだかんだ良い年」とこの一年間を振り返る。だが、決してうぬぼれない。この日も試合直後、金メダル片手にいつもの練習場に戻っていく姿があった。強さの秘けつはその姿勢にあるのかもしれない。
誰に一番この結果を伝えたいかと問われれば、「大貫さん」と即答。「同じ大学の者として目指すしかない」と、その目は世界を見据えている。彼が世界の的を射る日もそう遠くはないだろう。(林朋花)
【ボクシング部】21世紀初ダブル国体3位で、来春へ弾み
平成初の快挙を成し遂げた!第73回国民体育大
会で木戸口謙辰(法1)・増田陸(観3)が3位に輝く大活躍だ。 2015年国体3位の市川(駒大)や国際大会覇者の片岡(農大)ら2部の立大にとって強敵ぞろいの中、下克上を果たした。
勝ちにこだわる主将
三度目の正直だった。強敵を次々に倒し、国体3位。増田自身、大学で初めての入賞にも「優勝したかった」と不満顔を見せた。
今までの国体では実力を発揮できずにいた。1年次は初戦で敗れ、2年次は左手脱臼で挑戦権すら得られなかった。
だが、気持ちは折れなかった。脱臼中、右手のみで練習に参加。サウスポーにもかかわらず、右手の繊細な感覚を手に入れた。さらに今年はフィジカル強化で体勢の崩れを修正し、勝利へのどん欲さを見せた。
迎えた本選。市川を左ストレート、片岡を右ボディで撃破。準決勝では3度国体優勝の林田(和歌山県庁)に敗れるが、自身の実力を存分に発揮した。
主将に任命された増田は「勝つことでチームを引っ張る」と強く決意した。今季5位と苦しんだ立大。来季は勝利に飢えた主将が昇格へと導く。
雪辱果たしたルーキー
木戸口は屈辱を味わった。道内で高校チャンプとして名をはせたルーキー。リーグ戦では期待を受けたが、1勝4敗と負け越し。大学のレベルに圧倒され、自分のスタイルを貫けなかった。
リーグ戦後、悩めるルーキーは同郷でロンドン五輪代表の鈴木康弘氏に師事した。プレースタイルは木戸口と同じ。遠い距離で攻撃を仕掛けるアウトボクシングだ。スパーリングを共に行い、一流選手の技術を盗んだ。
成果はすぐに表れた。選考会では、高校時代1勝4敗と苦手の相手に勝利。高校時代に直面した高い壁をぶち破った。迎えた本選も1部校の選手を次々と撃破。特に準々決勝はカウンターで持ち前のアウトボクシングを披露し、勝利。自分のボクシングが全国に通用することを証明した。
準決勝は今大会優勝者相手に1点差で惜敗。3位に輝いたが「悔しい思いが強い」と淡々と語った。だが、偉業を遂げた男に井崎総監督は勝ち頭として期待を寄せる。来春は期待に応え、エースとなった彼の姿があるだろう。(玉真拓雄)
【体操競技部】桜井 全日本トランポリンシンクロ堂々銅 過去最高点47.275「感動でうれし泣きした」
初めてのメダルは2人でつかんだ!桜井美輝(コ2)にとって6回目となる全日本選手権。桐生莉沙(日体大)とペアを組み、シンクロナイズド競技で悲願の銅を獲得。実力を出し切り、予選と決勝でともに自己ベストを更新した。
練習通り
予選から絶好調だった。第2自由演技で高得点をマークし、ペア新記録を更新。自身も驚く1位で決勝進出を決めた。周りは世界で活躍する選手ばかり。うれしさの分だけ重圧も大きかった。
決勝の試技順は、最後に決まった。トランポリンにはライトが当たり、実況が前の演技に高評価を付けている。ふと見えた電光掲示板にはベストでも上回ったことのない点が表示されていた。全てが桜井を余計に不安にさせた。
「チェック」。技に入ろうとしたところで、桐生に「止まれ」の合図を出された。演技を中断する。止めたのは桜井の肩が緊張で上がっていたからだ。練習通り、と切り替える。「お願いします!」。大声で言い、演技を再開。一度止まったことで気持ちがほぐれ、大きな試合で初めて練習と同じ演技ができた。結果は予選を0・55上回り、またもやベストスコアを記録。自然とうれし涙があふれた。
理想の自分
本当は2年生いっぱいで選手生活に区切りを付ける予定だった。高校生の頃に出会ったトレーナーに憧れ、引退後は留学を考えていた。だがもう一年長く現役を続けると決めた理由がある。
今年5月、世界選手権最終選考会があった。五輪出場への足がかりともなるハイレベルな大会。桜井自身出られなかったが、桐生の応援に行った。観客席に座り選手の演技を見ながら、ふと考えた。「やっぱり自分も出たい」。このまま辞めたら悔いが残る。翌年の最終選考会出場に向け、またトランポリンに向き合い始めた。
今練習しているのは、まだ女子で行う選手が少ない屈伸前方3回宙返り半ひねり。12月のジャパンオープンに向け、磨きをかける。
トランポリンにも将来にも常に真剣に向き合ってきた。目指したい人物像は「尊敬される人」。自分がトレーナーに憧れたように誰かに目標とされる人でありたい。桜井らしく、自分の理想(ゆめ)を追い続ける。(南はるか)