【野球部】最終戦を47試合ぶり猛打賞で締めた飯迫、通算84安打“サコメーター”の続きは社会人野球で
飯迫恵士内野手(けいと・社4=神戸国際大附)が21日の明大2回戦で、2番一塁で出場し3安打を放った。猛打賞は昨年4月24日の慶大3回戦以来、47試合ぶり3回目。通算84安打となり、10月25日時点で現役選手では95本の渡辺佳明(明大4年)に次ぐ2番目の数字となった。チームは延長10回に犠飛でサヨナラ負けし、今シーズンの5位が確定した。試合後には、引退する4年生を送るセレモニーが行われた。バット一本で勝負した飯迫の大学野球での物語は終わりを迎えたが、社会人野球で“サコメーター”を刻み続けるつもりだ。
気持ちの整理がつかない。ロッカールームから出てきた飯迫は開口一番、「引退の実感がない。明日も試合をするつもりだったので、現実を受け止め切れていない」と素直な感情を吐露した。
明大との最終カード。1敗して迎えた2回戦の10回1死。中堅後方を襲う打球が寺山(社4=神戸国際大附)のグラブに収まると、同時にスタートした三塁走者が試合を決するホームに滑り込んだ。サヨナラ負けで、立大の18秋シーズンが終わった。中継プレーのために走ったマウンド付近で敗戦を受け入れ、「あー。引退か」と思ったという。
前日の取材では、「引退をそんな重くは捉えていない。四年間の大学野球の終わりぐらい」と飄々(ひょうひょう)としていたが、現実となった「引退」の二文字は想像以上に重かった。12分に渡る取材の最後にも、「終わりやな。悔しい」と繰り返した。
“最終戦”で、バットは火を噴いた。自身初の2番で先発出場し、47試合ぶりの猛打賞を記録した。初回、左翼線へ流して二塁打とすると、種田(営4=大垣日大)の右前打で先制のホームを踏んだ。3回にも変化球を引っ張ってチャンスメイク。またも種田の適時打で生還した。8回には、一死一塁から右前打を放ち、三井(コ2=大阪桐蔭)の同点打の呼び水となった。「勝たなあかんっていう意地」で神宮に惜別の快音を3度響かせた。
1年秋に初出場すると、東大2回戦で初本塁打を放つなど結果を残し、スタメンに定着した。2年秋には佐藤竜彦(16年度卒=現Honda)や笠松悠哉(17年度卒=現ヤマハ)らとともにクリーンアップを形成。そのシーズンに初めて規定打席に到達した。3年春は、打率3割3分9厘で21安打を放ちリーグ制覇に導くと、全日本大学選手権でも18打数6安打、4打点で59年ぶり日本一の立役者となった。4年時には六大学選抜として日本代表のユニフォームを着て、世界一を成し遂げた。「(1年時には)試合に出られるとは思ってなかった」という170㌢の一塁手にとって、試合に出続けてこられたことが唯一の誇りだ。
野球人生には続きがあるから、涙はない。卒業後は、2013年に日本一を成し遂げた社会人野球の「新日鉄住金かずさマジック」に入部する。今後は、智徳寮を退寮し友人の家に住みながら、1月の練習開始に向けて立大で練習を続ける。「最初からちゃんと練習に入れるようにしたいです。お金をもらうので、もっと野球と向き合えると思います」。“サコメーター”の更新は、これからも続いていてく。(10月25日・浅野光青)
◆飯迫恵士(いいさこ・けいと)◆
1996年10月1日生まれ。兵庫県出身。A型。社会学部メディア社会学科4年。左投左打。憧れは金本知憲氏。
球歴:岩岡サニーズー岩岡中ー神戸国際大附高
リーグ戦通算成績:79試合、84安打、打率2割8分5厘、1本塁打、37打点、9盗塁
名字:「名字由来net」によると、飯迫という名字は鹿児島、兵庫、東京を中心に約200名いるという。ランキングでは、21,671位という珍しい名字だ
ゼミ:メディア社会学科の林ゼミに所属し、卒業論文では「2018年夏の甲子園の報道について」をテーマとしている。12月の提出へ向け、急ピッチで仕上げている
◆番記者が見た飯迫さん
飯迫さんの番記者として、試合の度に取材をしてきた。無安打でチームが負けた時も、活躍した時も、素直な言葉で話してくれた。今年の春リーグ、「100安打へのカウントダウン」と題して、記事を書いた。残り42安打というタイミングで始め、結果的に、残り16本の84安打で飯迫さんは大学野球を終えた。「もし、プレッシャーになっていたら、書かないほうがいいのではないか」と考えを改め、秋リーグは記事を書かなかった。引退セレモニーでそのことを伝えると、「全然大丈夫だよ(笑) これからもがんばって」と言ってくれた。本心ではないかもしれないが、その気遣いだけでも嬉しかった。
私は野球担当を引退し、他の担当競技もラスト取材を迎える。飯迫さんの「がんばって」を胸に、残る活動をがんばりたい。そして、私からも「これからも頑張ってください。ずっと応援しています。ありがとうございました」と一ファンとして伝えたい。(浅)