【応援団】第八十七代団長黒田雄介~最後の神宮へ~
「ノリで入った」。ふとした思いで厳しい世界に身を置いて4年が経った。学ランを身にまとい、数百人の応援を先導することなど軽音楽部だった高校時代は微塵も考えたことなどなかっただろう。だが、そんな“予想外”の大学生活も一区切り。団長・黒田(文4)が神宮の舞台で輝きを放つのも今週が最後となる―。
新歓ブースに現れた時には金髪ピアスの風貌。硬派で厳格な応援団にとってはまさに彼は「異端児」。誰もが入部するとは思わなかっただろう。だが演舞の面白さに興味を持ち、最終的にはノリで入部。晴れて1年部員黒田が誕生する。
最初はただやらされているだけ」。理想と現実のギャップに戸惑う間も無いまま、ただひたすらに先輩から指示される練習を日々行っていた。そんな毎日に嫌気がさしたのは夏合宿後。「先々のつらいことを考えたら嫌になった。『続けたらいいことあるよ』と『同期もいるから』って先輩から声かけられたけどそれでもやめたいって思った」。だが、そんな黒田を思いとどまらせたのは2つ上の先輩の言葉だった。「やめたいならやめれば」。ほかの先輩が止める中、かけられたのは黒田の思いを肯定するような言葉。この言葉に黒田は奮起。「ここでやめたら中途半端だしダセエから続けてやる」。この思いを胸に、新たなスタートを切った。
しかし、黒田に新たな試練が訪れる。同期の退部だ。現在、リーダー台に立ち型を振るのは団長の黒田・副団長の宮本(文4)の2人だが、リーダー部に所属するのは黒田1人だ。唯一の同期から相談を受けたのは黒田が2年部員のころ。「その時はそいつも病んでたし、しょうがないと思った」。だが、年を重ねるにつれ1人でリーダー部を背負うことの難しさを実感。特に幹部と1番関係が厳しい3年部員の時に1人は厳しかったという。だが、その苦難を乗り越え見事団長へ。「幹部になった今でも1人っていうのは1番寂しい」。黒田は悲しげな表情で今でも拭えない孤独感を吐露した。
“孤独の団長”。そう捉えられかねないが決してそうではない。リーダー部だけでなく、吹奏楽部・チアリーディング部の三部同期全員で団長を支えた。「三部全体で個々がそれぞれ輝ける応援団を作りたい」。春季リーグが始まる4月、黒田は強く決意し尽力してきた。その成果を見せることができるのも今週で最後。応援団に捧げた四年間を有終の美で締めくくる―。団長・黒田は最後の神宮で力強く型を振る。
(10月19日 取材:玉真拓雄・宮武瑞季、編集:玉真拓雄)