【ソフトテニス部女子】『岡山インカレこぼれ話』/寺戸理紗、決勝にて初起用!リコ苦しめ、新チームへ自信つける

オーダー表提出を促すアナウンスが鳴っても、立大の荷物置き場にて上野コーチ(14年度卒)はあと1人を迷っていた。「寺戸(文3)、いける?」の声かけに、新主将は緊張の面持ちを隠せない。ペアを組む泉田(コ4)が近寄ってくると少し安心したのか、ラケットを持って、決勝のコートへ向かった。カトナカ、マツドイと雁行陣ペアを組み、残した1ペアの残る枠、後衛ーー。ラスト1人は、新主将・寺戸理紗だった。

決勝戦にて、寺戸は実力を発揮した。得点を決め、ガッツポポーズする新主将と、後ろからともに喜ぶチームメイト。来季はもっとこの光景が見たいものだ

決勝戦、他大学の関係者などすべての注目が集結する大一番で、寺戸は起用された。味方2ペアはあっさり敗北を喫し、後がない。勝つために求められるのは、マツドイが2度やってのけた3本回し。遠すぎる勝利までの道にも、「楽しくやろう!」。泉田からの声かけで、吹っ切れた。

意地を見せつけた。3番手には、前年度天皇杯覇者・林田リコを据えていた東女体大。2ペア勝利後とあって、敵陣はもはやお祭り騒ぎ。ほぼ勝利を確信したような、そんな声かけ、そして周りも優勝校を察し始めた中だったが、漂う敗色ムードを一掃した。粘り強く球を拾い、相手のミスを誘う。1ー0、2ー0、3ー0…。展開は、寺戸・泉田ペアのペースだった。

だが、意地を見せつけられた。長めのセット間休憩の後、相手ペアの顔色、ラリーの球足が明らかに変わった。ラリーの速さも、正確性も。ギアを入れなおしたのか、形勢が逆転していく。相手の勢いに、ここからミスが重なり始め…。後1セット。本当に、あと一歩だった。

「ほとんど覚えてないんですよね」。翌日、寺戸は大舞台での経験について語った。「歩聖さん(泉田)に、楽しもう!と言われて吹っ切れました。相手が強いのもわかっていたし、私の球が遅かったのかな?とりあえず、楽しかったです」。寺戸は今大会初出場。過去数大会も出場はなく、立大としても奇襲だった。それでも上野コーチは「合宿から走りこんでる姿は見ていた。やってくれると信じて、賭けました」と明かす。

この起用が、優勝にはつながることはなかった。しかし、日本一をかけた戦いに新主将を起用した選択に、将来性があることは確かだ。いつか、この起用のおかげという日が来るまで。「新チームでは普段の態度や言葉など、常に手本となれるような存在になりたい。プレッシャーはあるけれど、立教らしく楽しみます!」(10月5日/取材・文=川村健裕)

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